映画「はいからさんが通る」後編感想。少尉と紅緒の恋の結末。
大和和紀原作「はいからさんが通る」は1975年、講談社の「週刊少女フレンド」で連載されていました。(この頃は少女向けの週刊誌があったのですね)
前編を先日ネット配信で観て、ちょうど後編が上映されていたので映画館で鑑賞してきました。
前編はUNEXT、dTV、dアニメストア、ひかりTVなどで公開されています。
私は原作未読、旧アニメはほぼ鑑賞済みの状態で、ずっと結末が気になっていました。
こちらは映画館で観た後編の感想になります。
作画
残念ながら、全体的に雑な印象。
紅緒さんが木から落ちる前編との対比シーンで作画差があるとやはり気になる。
紅緒さんも環ちゃんもお顔が女学生時代より職業婦人になってからほんのり大人びて凛としていたように描かれていて、成長が伺えてとても良かった。
逆に言えばシーンシーンでもう少し可愛くても良かった・・・
他の方のレビューであるような、バストアップの止め絵が多用、というのは多少気になるところ(鬼島軍曹の冗談社登場シーン、、、笑)はあったけれど、許容範囲。
昔のアニメ風味なパステル調イラストでシーンの印象付け、という場面では少尉の横顔が美しくてもっと眺めたかったよね。
これは前後編通して言えるけれど何よりお衣裳が世相を反映させていて見ていて楽しかった。
日常のお洋服はもちろんのこと、婚礼衣裳は特に良いですね。
少尉のお葬式では白の喪服、結婚式はお武家様の家の娘らしく黒打掛。
編集長との結婚式でははいからさんらしくこの時代まだ珍しいウェディングドレス。
ドレスはくるみボタンの詰襟でクラシカル、、、もっと観たかった。
あと何かっていうと牛五郎イケメン。
演出
原作を映画用にカスタマイズしたため大体シリアスベースで進むストーリーに当時のアニメを彷彿とさせるギャグをぶっこむぶっこむ。
あのセンスは今の時代には通用しないので、どちからというと往年のファン向け演出かな、と理解。
元気でどんなときもハツラツとした紅緒さんが好きなので、ギャグシーンも微笑ましく見れた。はいからさんにはこれがないとね、という感じ。
関東大震災のシーンでは凌雲閣も描かれていて大正という時代を丁寧に表現されていた印象。
音楽
途中途中のBGMもやっぱり全体通して大正のイメージを忠実に再現していて、とりわけ少尉と紅緒のカフェでのシーンにかかるクラシックがこれまたノスタルジック。
挿入歌のゴンドラの唄はこの時代を描いた作品ならピンポイント。
大人と呼ばれる年齢になった紅緒と環が女学生の頃を思い出しながら、『いのち短し恋せよ少女』と歌う。
二人とも、もう恋はできないという境遇でこの挿入歌。せつない。
竹内まりやさんの曲はどんなときも女性への応援歌でとてもよいですすみません映像に夢中でさらりとしか聴けませんでした。。
ストーリー
駆け足ではあったけれど、紅緒さんの少尉への思い→編集長の紅緒を思って少尉の家を守る懐の深さへの感動→死ぬときに思い出す顔はやはり少尉だという告白、までの流れがとても分かりやすかった。
心は少尉にありつつも、少尉を拠り所にするラリサへの思い、自分のやりたいことを投げ打ってでも紅緒の思いを守りたい編集長の自己犠牲に見返りとして(と書くと少し語弊があるけれど)身を捧げる覚悟、そういう紅緒さんの気持ちは十分に伝わった。
反面、少尉の記憶の取り戻し方の性急さや編集長の略奪宣言(?)に対しての気持ちの収め方にもう少しイベントが欲しかった感はある。
もっともっと少尉の感情の発露が見たかったのは正直なところ。
あの横顔で全てを説明するには、少し、惜しかった、、、。
編集長がいい男だったのは、鬼島軍曹が「シベリアで俺たちがどんな思いをしてきたか」と詰め寄ったのに何も返さなかったところ。
それをちゃんと分かって紅緒が少尉を大切にするように編集長も少尉に敬意を払ったんだと思えば涙がちょちょぎれる。ていうか鬼島軍曹の台詞ですでに泣いてた。
それにしてもあの女学生時代の紅緒さんラスト。
どちらかといえば紅緒さんと少尉のカップルが好きなので二人で描いてほしかったけれど、この物語は紅緒さんの物語なので、仕方ない。笑
総括
気になるところはちょいちょいありつつも、はいからさんが通るファン、大正浪漫作品ファン、王道少女漫画好きであれば存分に楽しめる作品。
原作途中までアニメ化されていて、ラストまでは映像化されていない作品がたくさんある中で、こうしてラストまでリメイクして出してくれるなんてほんとうに素敵な試み。
主人公・紅緒さんの絶対的な強さ・明るさはどんなときも元気をくれる、前向きにしてくれる。
声優さんの配役もみんな違和感なく、特に宮野さんの金髪少尉役は安心安定でした。あと蘭丸はぴったり過ぎ。笑
ハッピーエンド好きとしては観ていてとても爽やかな気持ちになれる作品でした。